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観劇こそ我が人生

~観劇備忘録~

ミュージカル「パッション」観劇【感想】

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※Twitterに呟いたものをまとめて手を加えた記事になります。
 
スティーヴン・ソンドハイムの複雑で繊細な音楽に乗せて男女がそれぞれの愛の形を求めるお話。
日本初演なんだそうで。
相手に自分と同じ気持ちを求めてしまう人間性と、女性として心にあれこれ突き刺さるような場面にぐったりさせられつつも、超展開に「えっ?!」「あ、そっち?!」といちいち驚きのある作品でした。
 
※以下、ネタバレ注意※
 

簡単なあらすじ

19世紀のイタリア。
騎兵隊の兵士である若きジョルジオは、美しい人妻クララと情熱的に愛し合い毎日を幸せに暮らしていた。
しかし、ほどなくして彼はへんぴな田舎への移動を命じられる。
その土地では誰もが田舎での生活に飽き飽きしていた。
そんな中、ジョルジオは病気療養をする上官の従姉妹であるフォスカに出会う。
病に冒されているフォスカは、ジョルジオを一目見て恋に落ち、建前で優しくする彼を執拗なまでに追いかけるようになる。
クララへの愛に忠誠を誓い、フォスカの愛を受け入れず、冷たくあしらうジョルジオだったが、フォスカは自分を傷つけながらもジョルジオを諦めようとはしなかった。
閉鎖的な田舎での怠慢な日々。
その中でクララとの愛だけが唯一の拠り所であったジョルジオだったが、いくら愛しているとはいえ夫と子供を捨てられないと言う不実なクララにジョルジオは自分が思い描く「愛」に対して不信感を抱くようになる。
そうした精神的苦痛の中、日に日に増すフォスカの愛情表現という名のストーキング行為にジョルジオは……。
 
 
 
****
 
 
 ソンドハイム作曲の作品は「ウェストサイド物語」や「スウィーニー・トッド」ぐらいしか知らなかったのですが、こんなにも難しい曲だったっけ?!、と。
喋り言葉に近いメロディと、音階が難しい曲が多く、典型的なコード進行になぞったメロディではないので余計に難しく感じたのだけれど、オケの編曲はとても私の好みでした。
 
フォスカがジョルジオをハメてクララにも嫌われてジョルジオが地獄に落ちる話なのかなと最初観ていて思ったのですが、ジョルジオが自分からフォスカに落ちて行く様を見ながら何だか私はデスノートのリュークみたいな顔になりました。
リューク「人間て面白!」
 
そもそも不倫男と人妻と短命ヤンデレがメインキャラクターな時点でこの話に救いなんてないんですけどね。
 
ジョルジオとクララの幸せの絶頂から始まってからどんどんその幸せが遠ざかっていき、最終的には誰も幸せになれずに終わる訳なのだけど、最後はふわっと終わったので「お、おう?」と疑問符が浮かんだのですが、もうあそこまで行ったらああやって終わらせるのが逆に潔かったのかなあと。
そもそもフォスカが病を患っているのがズルい。そうなるしかないもんなあ。
 
シルビア・グラブさん演じるフォスカは、何か夢脳のヤンデレが来たぞ!と思ったのだけれど、あそこまで愛を剥き出しにして積極的になれるフォスカは逆に見習いたい所ではあるし、もしもそのパワーを生命力に変えることが出来るなら多分あのメンバーの中でフォスカが一番長生きしたんじゃないかなと思う。
でも自分が恋をしている相手の直筆で夢小説(手紙だけど)書かせるのはちょっと引いた。
 
その手紙をクララに見せつけて悪女にでもなるのかと思いきや(そっちの方が見たかった)、自分のベッドの枕横に置いてその手紙を大切
にしているフォスカは、マジでジョルジオガチ恋勢で色々とこう自分自身身に覚えのある恥ずかしい青春や恋心が頭を過った。
シルビアさんの演技も歌もとても良かったです。
特に悦に浸っているフォスカは怖かった。
 
そして興味もなく、逆に気味が悪いと思う程の相手にお願いされてベッドで添い寝したり手紙を書いたりするジョルジオは何というか優しいのか、バカなのか。
でもはっきりとフォスカを断る気持ちや術を持っているのに何故?
ドクターの言う通り"イカれて"しまったんだろうか?
と、思ったのだが、フォスカの愛は「貴方の為なら死ねる」というフォスカの言葉通り、それは無償の愛(アガペー)で、万人にそれが出来るかと問われればそれはとても難しい事である。
だから究極の愛であるアガペーを一身に受けてしまったジョルジオは、普通の愛では満足出来なくなってしまったのかな?と。
そう考えると冒頭のクララとの愛が至上最高だと思っていたジョルジオが、それ以上の愛を見つけてしまう話ということで納得出来る。
愛が美と醜を越えた、みたいな(とても歪だけれど)
あと、よく分からなかったのだけれど、あれ最後に出てきたジョルジオはフォスカの病が伝染してしまったのだろうか。
 
クララも夫と子供が居なかったらジョルジオの事をあんな風に愛していたのかな?
確実な幸せが背後にあるから、ジョルジオみたいな男も愛せていたのかな?
と思うと、ジョルジオが中々可哀想だが、そもそも人妻に走る時点でジョルジオが残念なハンサムなのには変わりない。
医師と話しながら自分の中で究極の答えを導き出して「これが愛か!!」って自己解決してしまうシーンはちょっと面白かった。
他のお客さんも笑ってた。
ギャグが始まったのかと思ったけれど、ジョルジオは、余程人の気持ちに対して敏感で感受性が豊かな男なんだろうなと同時に思った。
 
フォスカがジョルジオへの愛を確信して最初に攻めるシーンでの「あの人達はドラム。私と貴方はメロディー」って言うフォスカの台詞が私は好きです。
 
それから2幕冒頭ではフォスカの過去話で女故に目を背けたい事実を高らかに歌い上げるシーンがあるのですが、「男は不細工でも色んな道がある でも女は花。美しくなければ愛されない」っみたいな歌詞を強調するように何度も繰り返して歌うので、思わず「ヤメローーーー!!!」って言いながら舞台上に重量級のタックルをしかけそうになりました。
もちろんあの頃の時代背景からして女性はそういう見方をされていた時代だからなのもあるのでしょうが、途中、ジョルジオに「天使のように美しい」とまで言われていたクララも意味ありげに出てきて、どんなに美しいものもいずれ枯れていく悲しみが強調されており、同じ女性として見ていて刺さるものがありました。
 
そういえば、常日頃気にかけている内藤大希さんの出番が思ったより多かったパッション。
アンサンブルではなかったので驚いたし、どんどん色んなミュージカルに出てくれたら嬉しいなあ。
 
彼もそうですが、他の脇役の方々も歌もお芝居も上手な方ばかり、和音さんの素敵な歌声も特にそうですが、世界観がまとまっていたというか、難しい作品なのにしっかりと脇が固まっていて、その中で更に実力のある方々が物語を膨らませていたので少人数でも大きく見える作品だったな、と。
 
あと何よりも黒髪パーマな井上芳雄さん良かったです!
それからジョルジオとフォスカ達が城の散歩をしている時に、階段を降りるフォスカの手を取ってから降りた後、スマートにその手を取って自分の腕に絡ませる井上ジョルジオのエスコートっぷりがあまりにも自然過ぎて、キャー!って心の中の乙女ランプがチカチカ点灯しました。
 
軍服で眼福!(オチ)
 
 
 ミュージカル『パッション』
日本初演
2015年10月16日(金)~11月8日(日)
新国立劇場 中劇場
 
<スタッフ>
作曲・作詞:スティーブン・ソンドハイム
台本:ジェームス・ラパイン
翻訳:浦辺千鶴
訳詞:竜 真知子
音楽監督:島 健
演出:宮田慶子
 
<キャスト>
井上芳雄 和音美桜 シルビア・グラブ 福井貴一
佐山陽規 藤浦功一 KENTARO 原 慎一郎
中村美貴 内藤大希 伊藤達人 鈴木結加里
東山竜彦 吉永秀平 一倉千夏 谷本充弘
白石拓也 小南竜平 岩橋 大 荒田至法
 
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