観劇こそ我が人生

~観劇備忘録~

「ダンス・オブ・ヴァンパイア2015」観劇【感想】

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みんな大好きダンス・オブ・ヴァンパイア!
 
踊って楽しいダンス・オブ・ヴァンパイア!
 
と、いうわけで周りから散々「楽しいよー!」「面白いよー!」と言われ続けてきたTDVをようやく観劇してきました。
(原題タイトルの「Tanz der Vampire の頭文字を取ってファンはTDVと略すらしい)
 
帝国劇場に一歩入れば、受付にはたくさんのニンニク。天井ではコウモリが飛んでいたり、トイレの表札が主人公とヒロインのチーフになっていたり、開演前から劇場内が宴の雰囲気に包まれていて一種のお祭り気分のよう。
 
開演前のアナウンスは、主人公アルフレート役のキャストの方が面白おかしく喋っていました。
 

簡単なあらすじ

ヴァンパイアの故郷と言われている極寒のトランシルバニア地方で、吸血鬼狩りをしている好奇心旺盛のアブロンシウス老教授と臆病な助手のアルフレート。
二人は雪すさぶ森の中で何故かはぐれてしまい、アルフレートがようやく教授を見つけると、なんとあまりの寒さで教授が凍り付けに。
アルフレートは教授を近くの小さな村の宿屋へと運び、教授は何とか一命を取り留めます。
そして教授は「ガーリック! ガーリック!」と奇妙な歌を唄い踊る村人たちが皆、ニンニクを首から下げていることに気が付きます。
怪しい、と村人を問い詰めていると、うっかり口を滑らせた村人が言いました。
「この近くに伯爵様のお城があるのです」
恐らくこの村は吸血鬼に目を付けられている。そう確信した教授達は、一旦宿屋に泊ることに。
そこでアルフレートはサラというお風呂好きの宿屋の娘に出会います。
その可愛らしさに一目惚れしまったアルフレート。
そんなアルフレートに対し、サラもまんざらでもない様子で微笑みかける。
しかし、そんなサラの前に吸血鬼であるクロロック伯爵が突如現れ、サラを甘い言葉で誘惑します。
その誘惑に魅力を感じたサラは、伯爵の召使であるせむし男のクコールの合図で渡された赤いブーツを履き、一人森の中へと姿を消してしまったのでした…。
 
****
 
吸血鬼もののお話なので、一見ダークホラー要素のあるお話かと思いきや、蓋を開ければとんでもなくB級コメディ。
随所に笑いの要素がちりばめられていて、かと思えば魅力的なダンサー達によるダンスシーンは迫力がありとても見応えがあります。
時には孤高の吸血鬼の寂しげな姿に考えさせられたりもしながら、80年代洋楽ファンにはたまらない選曲におもわず心が躍る連続。
ある意味何も考えずに目で見るだけでも楽しいお話だなと(伯爵様の登場シーンとか面白すぎる)
 
けれど、見方を変えれば哲学的なことをこちらに語り掛けてくるような場面もあり、観る人によって楽しみ方が変わる作品だと思います。
ハマる人にはハマる作品なんだろうなあというのが全体を見たぼんやりとした感想。
 
舞台セットは全体的にチープな作りだったのだけれど、図書室のセットはおもわず教授と一緒に「本だ!」と喜びたくなるくらい素敵なセットでした。
舞踏会のシーンの電飾は、伯爵様監修の元、クコールがちまちま飾り付けをしていたのだろうか、と考えると何だか吸血鬼達に愛情が湧いてくる気がします(笑)
小道具も細かくて、本当に目が楽しかったです。
 
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個々の感想

 
クロロック伯爵/山口祐一郎
この方以外に伯爵やるなら誰よ?って聞かれても今のところ他は考えられないくらい日本版伯爵のイメージといえばこのお方。
 初演からずっとこの方らしいけど、世間知らずっぽいところが不思議と伯爵に合ってるなあと。
カーテンコールになるとただの可愛いおじさんになる。
 
サラ/舞羽美海
 大人っぽい少女なサラの方。
流石元宝塚な方、ダンスのシーンがとても魅力的。
入浴シーンでは漫画のように足をピンと真っ直ぐ上に伸ばして洗っていたり身体能力が全面に出ているイメージ。
伯爵と自由という夢に夢を見ている乙女思考っぽいサラだった。
 
サラ/神田沙也加
可愛い小悪魔系少女なサラの方。
本当の少女のように愛くるしくて、怒ったり笑ったり表情がクルクルと変わるイメージ。
それなのに夢を見ず「お城に行くぞ!」って確固たる意志を持っている現実思考っぽいサラだった。
 
アルフレート/平方元基
「プロ―フェッサー」って歌う人。
長身でスタイルは良いのに怯え方が大きい。
でも教授に対しては友達感覚な接し方で何なら教授のことを舐めているようなアルフレート。
サラとの接し方は女慣れしてそう。
 
アルフレート/良知良次
「プローヘッサー」って歌う人。
ちょこちょこ動いていちいちリアクションが大きい。
教授にくっ付いて歩く姿は雛鳥。教授のことが大好きそうなアルフレート。
サラとの接し方は女慣れしていない初心感がMAX。
 
アブロンシウス教授/石川禅
可愛らしい見た目に反してピリッと辛い演技が上手な方。
現実主義者で目の前の探究心という欲望に忠実な教授。
アルフに毎度ズケズケと日替わりで文句を垂らすが、
平方アルフには「全くお前は本当に…」って呆れた感じで、良知アルフには「全くお前は可愛いからって…」っとアルフによって辛口度が違っていた。
「本だ!」の曲の時の早口は必聴。
 
マグダ/ソニン
たわわな丸い大きいものについつい目がいってしまう誘惑的な方。
「死んじゃうなんて」の時の狂乱っぷりは思わず怖くなるくらいの歌声でびっくり。
吸血鬼化してシャガールに対し愛情が芽生えて「女」になったところの台詞の言い方が、とても色気たっぷりで良かった。
カーテンコールで煽る姿も素敵。
 
ヘルベルト/上口耕平
レザーブリーフに網タイツの衣装は一体誰が考えたのか。
父である伯爵の指を噛んでみたり頬ずりしてみたり大分パパっ子なご様子。
意識高い系吸血鬼な見た目に反して、
アルフレートを見た瞬間にトキめいたり初心な乙女のようにキャッキャしていた。
と、思ったら舞踏会のシーンでサラをエスコートする姿は美しい。
と、思ったらカーテンコールになると水を得た魚の如くフォー!とでも言いそうな
キレッキレダンサーになっていた。
1つの役のはずなのに3役くらい見せてもらっている気持ちになるお得感のある人。
 
シャガール/コング桑田
愛らしいフォルムのお方。
人間の時はただの卑しい親父なのに吸血鬼化すると途端に可愛くなるのは何故なのか。
ユーモラスな演技とソウルフルな歌声にとても好感が持てた。
 
レベッカ/出雲綾
小さくて可愛らしいマダム。
シャガールと一緒にまるまるしていて、隣に並ぶと更に可愛らしい夫婦に見えた。 
凍えた平方アルフがもたれ掛かってきた時は潰されないか毎度ハラハラしてしまった。
森の中へサラを探しに向かう夫の背中を見送りながら涙する姿が印象的。
 
クコール/駒田一
みんなのアイドルクコールさん。
残念ながらトイレ厨は幕間に席に座っていられないので幕間に行われる駒田さんの本番とも言えるクコール劇場はほとんど観ることが出来ていないのが残念。
劇中でガウガウ語で「こんにちは」って言っていたのが印象的なのだが、どう頑張ってみてもクコール中の駒田さんは本当に駒田さんなのか?と思うほどいつもの駒田さんとは違うので、今回は本当にクコールというキャラクターとして見ていた。
 
ヴァンパイア・ダンサー/新上裕也
心情を美しく比喩した踊りをする人。
動きがしなやかなのに動きはダイナミックで、とても目を引く人だった。
フィナーレで紙吹雪を持って高速回転したりと、技術力の高さが印象的。
 
ヴァンパイア・ダンサー/森山開次
複雑な心情を荒々しく比喩した踊りをする人。
長くて細い手脚が、それこそ枝木のようにしなやかな流れを作って、一挙一動の行動が最早絵画のように洗練されていたのが印象的。
 
***
 
ギャグで面白おかしく話を進めながらも、登場人物全員が何かしらの欲望によって行動を起こしているこのお話。
 
全体を初めて観終えてまず思ったのが、欲望に抗うことが出来ずにあらゆる手段で求めてしまうという行為は人間である象徴なのだと思うのだけれど、所詮人間はそんな愚かな生き物なんだぜハハッみたいな皮肉が込められたパロディ話なのかな?だった。
 
永遠の命を持った伯爵が「欲望の赴くまま何度も同じ過ちを繰り返してしまう」のは伯爵自体が人間の比喩?なのかなと勝手に思っているのだけれど、自分の考えが何処まで正しくて何処からねじまがってるのかよく分からなくなってきたので、インスピレーションを働かせてくれる演劇って大好きです。
 
妄想万歳わはは。 
 
そういう意味でも、観る人によって受け取り方が変わってくる作品のひとつでもあるこの作品は、どういう感想を持ってもいいと思うんですよね。
つまらない作品だと感じる人も居るかもしれないし、宗教的な意味合いを含んだ複雑な作品だと感じる人も居るかもしれないし、馬鹿騒ぎしてただ歌って踊ってるだけの楽しい作品だと感じる人も居るでしょう。
 
B級コメディとはいえ多種多様な感情を引っ張り出してくれる作品ほど面白いものはないと思うので、私はこの作品を観ることが出来て良かった。
 
そんな冬にぴったりの作品です。
 
ミュージカル『ダンス・オブ・ヴァンパイア』
2015年11月3日(火・祝)~30日(月)@ 帝国劇場
2016年1月2日(土)~11日(月)@ 梅田芸術劇場
2016年1月15日(金)~17日(日)@ 愛知県芸術劇場