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観劇こそ我が人生

~観劇備忘録~

「ラディアント・ベイビー ~キース・ヘリングの生涯~」【感想】

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「ラディアント・ベイビー」を観劇。
ポップでジャージーな歌とダンスナンバーに乗せて、短いキースの人生がスピーディーに彩られていた。
柿澤さん以外にキースを出来る人間は多分居ないんじゃないだろうか?
そう思わせてくれるくらいに、柿澤さんの熱量が凄かった。
そして"今"という時間の過ごし方について考えさせられる作品だった。

※以下、ネタバレ注意※

簡単なあらすじ

1980年の代表的なアーティストとして名を残したキース・ヘリング。
彼は父親の影響を受け、小さな頃から絵を描くことに夢中だった。
そして少し変わっていた彼には中々友達が出来ず、それも手伝ってキースはどんどん絵の世界にのめり込んでいった。
NYにあるSVA(スクール・オブ・ビジュル・アーツ)へ行き、のちの親友チェン・クワン・チーと出会い、地下鉄アートを思いつく。

ある日、「パラダイス」というディスコに訪れたキース。
周囲に溶け込めず、踊らずにディスコの端でポケットに手を入れて立っているキースを見つけたのちの恋人DJカルロスは自分に自信をつける為に、踊らない彼を躍らせる為に曲を変え、ビートを上げる。
カルロスの音楽で最高にハイな気分で踊り出したキースはその夜をカルロスと共にした。
そして多忙を極めるキースにアシスタントとしてアマンダがスタジオに入る。
東京にポップショップを開店するなどキースは仕事も友人も恋人をニューヨークで手に入れ、ようやく人生が上手くいきはじめていた。
そんな矢先、キースはエイズと診断されてしまう。

キースの名前と作品が有名になるにつれ、自分の作品の意味と世間が思い描く作品の意味に差が付き始め、「自分のアートとは一体何なのか」と向き合うことになる。
描きたいものが分からなくなり、これから先描きつづけることの出来ない未来に焦燥感ばかりが募っていき、何もかもを放棄したいと思い詰めるキース。

そんな彼宛てに一枚の手紙が届いた。
それは、キースに影響を受け、絵を描き始めた子供からの手紙だった。
「止まってなんかいられない。描き続けないと」
再び筆を持ったキースは、それから最期を遂げるまでの2年間、アーティストが一生涯をかけて制作する作品程の数を、筆が持ちあがらなくなるその時までひたすらに描き続けた…。

感想

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(ロビーにはキース・ヘリングの作品が一面に飾られていた)

キースの人生は本当に速すぎて、早すぎて。
それを演じる柿澤さんも全身の汁を絞りきる勢いで動いていて、見ているこちらにまでその熱が伝わってくるようだった。
ほぼ出ずっぱりの状態で叫ぶように歌う柿澤さんを見ていて凄く心配になったのだけれど、それくらい命を削って演じているんだろう。
彼の"今"しか見れない彼の命を見せてもらった気分だった。

平間くん扮するクワンが真っ白な衣装で出てきた時、真っ先にエンジェルを思い出した。
一度観ただけの私には理解できなかったのだが、クワンが先に亡くなって、その後にキースが亡くなったらしい。
同じ時代だからなのもあるけれど、所々RENTを思い出したし、RENTの登場人物達も今回のキースやあの頃のアーティスト達も、偏見や差別が渦巻く世の中でとにかく自分の人生に生きがいとか痕跡とかそういうものを残そうと一所懸命だったし、一瞬一瞬自分たちの輝く時という命を大切にしてるように思った。

他のキャストも全員歌も踊りも上手くて、そのひとつひとつがラディアント・ベイビーの世界観をより華やかに演出していた。
誰が歌っても歌がとっても上手いって結構凄いことだと思う。
SHUNさんとSpiさんのハードゲイな衣装にポールダンスは中々なものでした。
SHUNさん良い声過ぎる…。

子役の子達もとってもキラキラしていて、何だか少しM!を思い出してしまった。
開演前のアナウンス役も担っていたのだが、小さな子供だから受け入れられるぶしつけな台詞と「恐縮です」なんて大人が使うような台詞に、会場に居る観客全員が確かに耳を傾けているのが分かった。子供の力は偉大だ。
それに天使のような歌声と愛らしい笑顔は見ているだけでパワーを貰えている気がした。
ちょうどこの間、「子供は命の比喩である」という言葉をラジオで聴いたのだが、子供には「未来」への希望の意味も同時に込められている。
そう思って観てみるとまたこの作品への深みが増すのかもしれない。

個人的にタイムリーな題材だったので、色々と感じるものは多かった。
例えばあと2年でこの世とさよならしないといけないのだとしたら、私もきっとキースみたいに止まってなんていられないと思う。
子供の時の2年間は長いように思えたが、大人になってからの2年間なんて一瞬だ。
死ぬまでに自分の生きた証を残したいとも思うし、自分が作ったもので生きている他の人の為に少しでも役に立つことが出来たなら、その瞬間に生まれた意味が出来上がる気がする。
だからこそみんな死に向かって"今"を生きているのだと思う。
例えば薬だって荒れきっていたあの時代の人達にはなくてはならないものだったんだろうし、"今"を生きる為には必要なことだったのだろう。
キースの人生を見つめながら、そんなことを考えたりしていた。

RENTもそうだけれど、日本ではまだまだ浸透していないLGBTやHIV、エイズなどの知識や理解を深める為にも、こういった作品はどんどん上演していってほしい。


「ラディアント・ベイビー ~キース・ヘリングの生涯~」
2016年6月6日(月)~22日(水)シアタークリエ
2016年6月25日(土)・26日(日)森ノ宮ピロティホール

脚本・歌詞:スチュアート・ロス
音楽・歌詞:デボラ・バーシャ
歌詞:アイラ・ガスマン
演出:岸谷五朗
訳詞:小林香
音楽監督:前嶋康明
振付:大村俊介(SHUN)、原田薫

出演:柿澤勇人/平間壮一/知念里奈/松下洸平
Spi/Miz/大村俊介(SHUN)/汐美真帆/エリアンナ/香取新一
加藤真央/MARU/戸室政勝/おごせいくこ
大西由馬/設楽銀河/永田 春/朝熊美羽/伊東佑真
漆原志優/新井夢乃/小林百合香/ミア

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